一般民事関係 事例1 女の顔の値段

千葉地裁松戸支部 昭和58年3月29日判決、一部容認、確定, 判例時報1099号109頁

事案の要旨

 千葉県柏市内での交通事故で、被害車両の乗っていた小学三年生の女子(事故当時)が、顔の前額部、右頬部、左頬部に九か所にわたる合計20.9cmの顔面瘢痕を負い、その損害を請求した事案。

解説

昭和57年頃までは、交通事故等で顔に醜状瘢痕を負った場合の、モデルなどの容貌が重視される特殊な職業に就いていない限りは労働能力の喪失が認められないとして、逸失利益ではなく、慰謝料において考慮されるのが通常でした。
しかし、この判決は、幼児・学生の女子の外貌醜状について以下のように判示し、労働能力喪失を認めました。なお、現在では、男子の外貌醜状についても労働能力喪失が一般に認められています。
「一般に女子の外貌醜状が直ちに労働能力喪失に結びつかないとしても、幼児・学生の場合には、成長した後、女子の美貌を必要とする職種への就職が不可能になるばかりか、一般の就職・婚姻等の社会生活において事実上不利益を受ける蓋然性が高いことも否定できず、特に後遺障害である外貌醜状により将来の就職の可能性が障害がない場合と比較して客観的に低下していると認められる場合には、未婚既婚を区別することなく、その程度に応じて一定の割合で労働能力が喪失したものと認め、右労働能力喪失自体を金銭的に評価して後遺障害による逸失利益を算定することが相当である。」
そして、本件については「将来の就職の可能性が障害がない場合と比較して客観的に低下した」と判示し、慰謝料の他に、18歳から40歳までの22年間にわたり労働能力喪失率5%を認めました。