高次脳機能障害の等級例 E, 7級

(1)さいたま地裁  平成15年3月7日判決、平成10年(ワ)第230号

高次脳機能障害7級4号及び声門下狭窄による嚥下障害10級、併合6級、  判例集未登載
  1. 事故の概要

     被告(当時18才)は、平成5年5月15日午後5時10分頃、普通乗用自動車を運転し、埼玉県川越市川鶴一丁目一五番地二先路上を川越市鶴ヶ島駅方面から川越市笠幡方面に向かい進行するに当り、同所は制限速度40キロメ−トル毎時の道路であったから、右最高速度を遵守するはもとより、ハンドル、ブレ−キを的確に操作して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、制限速度を超える時速約60キロメ−トルで進行し、進路前方左側の駐車車輌の間から右方へかけ足で横断を始めた原告本人(当時6歳)を前方約26.6メ−トルに認めたのに直ちに制動措置を講じなかった過失により、自車前部を同人に衝突させ、路上に転倒させ、よって同人に約4年と84日間の長期加療を要する脳挫傷、肺挫傷等の障害を負わせたものである。原告は平成13年7月31日(当時14歳)に症状が固定した。

  2. 症状

    1.  本件における「認知障害」「知能低下」「人格変化」としては、「注意、集中困難把持力の低下、攻撃的な感情表出、感情のコントロールの仕方に未熟な面がある。(以上、甲第42号証参照)「現在もまだまだら健忘あり」(甲第60号証参照)、「構成失行」(甲第26号証の1参照)があり、「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」(甲第58号証参照)によると、「集中力が低下していて、気が散りやすい」「感情が爆発的で、ちょっとしたことで切れやすい」「人混みの中へ出かけることを嫌う」等がある。
      「日常生活状況報告表」(甲第59号証)によると、「同時に複数のことを並行してできない」「すぐに泣いたり怒ったり笑ったりする」「わずかなことで興奮する」「いらいらしやすい」「場所をわきまえず怒って大声を出す」「飽きっぽくてひとつのことが続かない」「一度気になるとこだわってしまう」「大きな音などをうるさがる」「親しい友達がいなくなった」「時には家族や周囲の人とトラブルが多い」等が認められる。
       更に、以下の証拠によっても記銘力障害、集中力障害、人格変化が認められる。「数の逆唱」の問題で、「10才級の設問から失敗がみられ」、「八つの記憶のための読み方」(10才3ヶ月級)に失敗している(鈴木Binet式知能検査甲第46号証、当時12才11ヶ月)。
       また、文章の記銘あるいは文章内容の把握の仕方がやや不十分であるという。本件患者の学業成績も全般的に不良である【甲第41号証@、A、第48号証1ないし3、中学1年生の1学期中間テスト、当時13歳】これらの「認知障害」「知能低下」「人格変化」は、画像によって認められる、事故によるびまん性脳挫傷、外傷性クモ膜下出血、脳梁損傷、脳萎縮等の脳損傷の部位、程度などを考えるならば、脳損傷に伴う器質性精神障害と捉えられる。
       本件患者に関しては、鈴木Binet式知能検査やWISC−R知能検査法等が実施された。鈴木Binet式知能検査の結果(甲第43~46号証参照)では、1993年6月23日本件事故6ヵ月後の6歳6ヶ月時のテストでIQ901995年3月20日実施の8歳2ヶ月時のテストではIQ1261999年12月19日実施の12歳11ヶ月のテストではIQ95であった。一時IQが上がった時期もあったが、現在では低下傾向が認められる。
       甲49号証 診断書(平成12年4月7日付)、甲第55号証 心理検査報告書:(WISC-Rテスト(註))平成12年3月16日付・本件患者が13歳2ヶ月時)によると、言語性IQ97、動作性I Q87、全検査IQ92でいずれの検査も100以下にとどまっている。

    2.  脳波検査では右頭頂葉を中心にδ波が認められ、全汎性遅波がある。これらは、挫傷による器質病変を反映しているものと考える(甲第25号証1〜4、甲第27号証 参照)。

    3.  意識障害 JCS

       甲第18号証の1(診療録)
       3頁(平成5年5月15日) LEVEL100(LEVELV-100のうちVが脱字したものと思われる)
       5頁(平成5年5月15日) LEVELV-100
       8頁(平成5年5月15日) LEVELV-100
       9頁(平成5年5月16日) LEVELV-100
       10頁(平成5年5月19日) LEVELV-100

    4.  画像所見について

      1.  クモ膜下出血の所見
          甲第20号証診療録 平成5年5月15日から6月9日(埼玉総合医療センターリハビリ科医師作成)1、2、6、7、8、10頁に「クモ膜下出血」の記載あり。

      2.  びまん性軸索損傷の所見
         診療録にびまん性軸索損傷の記載がある(甲第19号証)と記載がある。

      3.  脳梁損傷の所見
          甲第17号証の2

      4.  脳萎縮の所見
          右頭頂〜後頭葉の局所的脳萎縮が認められる(甲第53号証の1、2)。