高次脳機能障害 認定システム確立の歴史

私が興味が有るのは損害賠償法の分野で、具体的には交通事故、医療ミス等です。
最近では医療ミスが多発し、患者さんが被害を受ける事例が増えています。私はこれまで患者さんの立場に立って医師の過失を追求してまいりましたが 現在、特に興味を持っている問題は交通事故における「高次脳機能障害」の問題です。

高次脳機能障害とは、交通事故の被害者が頭部の外傷、例えば脳挫傷という損傷を受けた場合です。現在では救急医療が大変進歩しましたので昔は救命できなかった頭部外傷の被害者が救命されるようになったのは、大変結構なことなのですが、困ったことに被害者の方々の頭部に後遺症が残存する場合が多いのです。これが「高次脳機能障害」の問題です。
「高次脳機能障害」とは、最近認められるようになった障害であり、種々の定義がなされていますが、自動車事故や脳血管障害、外傷性脳挫傷などの原因で、脳が損傷されたために、後遺症として、言語、思考、行為、学習、注意等の脳の知的な機能に障害が残ることをいいます(厚生労働省のホームページに掲載されている「高次脳機能障害支援モデル事業 中間報告書について」に詳しい定義が載っています。)

高次脳機能障害では:

  1. 比較的古い記憶は保たれているのに新しいことが覚えられない。
  2. 物事や場所、時間が認識できない。
  3. 意欲、行動力の低下。
  4. 会話がうまくかみ合わない。
  5. 感情の抑制ができない。
  6. 段取りをつけて物事を行うことができない。

といったような様々な症状が現れ、生活に支障を来すことがあります。

[高次脳機能障害認定システム確立の歴史]

平成12年以前のシステムの不備と旧制度の改正の動き

 ところが、困ったことに自賠責保険における交通事故の後遺症の認定(1級から14級迄)は自算会の各地の調査事務所が顧問の医師に委嘱して行っていたのですが、高次脳機能障害についての、判断基準が明らかになっていないこと、顧問医〔専門医でないことが多かった〕の知識や経験、所属医療機関の医療機器にバラツキがあり、必ずしも正当な認定がなされていなかったところに問題がありました。不当に低い後遺症等級の認定が行われたり、ひどい場合には、全く認定が行われずに、却下されることもあったようです。
 平成12年には、「高次脳機能障害」に関する社会的関心が沸騰しました。制度の不備に対する被害者の惨状及び制度の不備を報道する新聞報道が多かったのです。平成12年当時の新聞記事の「要旨」や「見出し」を下記に紹介いたします。
 そこで、旧「運輸省」では平成12年8月4日に自賠責保険(自動車損害賠償責任保険のこと)における「高次脳機能障害認定システム確立検討委員会」を発足させました。この検討委員会の検討課題は自動車保険料率算定会(自算会)において、高次脳機能障害について、自賠責保険における後遺障害として的確に認知し、保険金の支払いを適正に行う仕組みを平成12年12月までに確立することになりました。
 旧運輸省の通達に基いて「自算会」では平成12年末までに6回の会合を開き高次脳機能障害の自賠責保険上の後遺症としての評価方法等の適正な認定システムを確立することになりました。
そして、ついに、平成12年12月18日付
「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて
    高次脳機能障害認定システム確立検討委員会 報告書」という文書が自算会から発表されました。

平成13年1月1日から新制度の発足

平成13年1月1日から、高次脳機能障害については専門医で構成する自賠責保険審査会・高次脳機能障害専門部会(以下高次脳機能障害審査会という)の審査を受けることになりました。そして、高次脳機能障害審査会が平成13年1月1日から、上記の報告書が示す審査基準に則り、高次脳機能障害の事案の審査を実行しているのです。
旧自動車保険料率算定会(自算会)についても、損害保険料損失機構という新しい名称になりました。この損害保険料損失機構の本部(東京)に上記の高次脳機能障害審査会が設置され、全国の高次脳機能障害の事案が集約されて、審査を受けることとなって現在に至ったのです。
                            
[毎日新聞] 平成12年1月22日(土)

[朝日新聞] 平成12年5月28日(日) 朝刊 (「 」内は見出し)

[日本経済新聞]平成12年7月11日(火) 夕刊 (「 」内は見出し)

[毎日新聞]平成12年10月20日(金) 夕刊 (「 」内は見出し)